農地を借りた方が亡くなったとき、相続人は農地を返さなければならないでしょうか。
これは、貸し借りが有償(賃貸借)か無償(使用貸借)かにより取り扱いが変わります。
賃貸借契約の場合
相続が生じたとき、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するものとされます。
そこで、まず、賃貸借の場合、農地の借主が亡くなった場合、借主たる地位は相続人に承継されます。
直ちに農地を返す必要はありません。
使用貸借契約の場合
これに対し、使用貸借の場合、借主が死亡した場合は使用貸借は効力を失います(民法599条)。
原則として農地を返す必要があることになります。
これは、使用貸借は貸主と借主の特別な人間関係に基づくものであり、相続による承継には馴染まないことによるとされています。
もっとも、民法599条は任意規定であるため、特約で排除することができます。
また、判例上、一定の事情がある場合は同条の適用が否定されるとされています。
このような場合は、相続人は引き続き農地を借りることができ、直ちに農地を返す必要はないことになります。